変化を受け入れること、それがSEO業界の掟

SEO Bookから変革を続けるSEO業界の今について、Googleの歴史を紐ほどきながら考察した記事を。前回の記事はGoogle批判の応酬で読みづかれてしまった人も多いと思いますが、今回はよりシンプルでストレート、SEO関係者には是非読んでほしい価値ある内容です。 — SEO Japan

SEOは以前から変化が頻繁に起きる業界であった。しかし、ここ1、2年は、変化の頻度が高まり、また、規模が大きくなった気がする。2003年にフロリダアップデートが行われたが、それ以来、半年に1度はフロリダ級の変更が加えられているように思う。

Googleが根本的なシステムをアップデートする度に、戦略を調整して、対応しなければならない。残念ながら、予告が行われることはなく、フェアなゲームとは言い難い。

調整から戦略へ

SEOを実行するサイトがスタンダードな法則に従っていた時期があった。Web Position Gold(ソフトウェア)を覚えている方も多いのではないだろうか?

Web Position Goldが登場したのは、SEOが一連の反復可能 – 大部分において技術が要求される – ステップで構成される時代であった。キーワードをページに加える、十分な頻度でキーワードを繰り返す、少数のマークアップを確認する、そして、「理想」のページと比較する、ウェブにアップロードする、リンクを幾つか加える、少しの間待つ、ウェブランキングレポートを実行する…それでSEOを語ることが出来た。とりわけ競争が激しい分野を除き、このステップを踏んでいれば、上位にランクインすることが可能であった。

しかし、この取り組みは時代遅れになってしまったようだ。

現在、この全てのタスクを実行しても効果は見込めない。多少効果があったとしても、他にも多数の要素があり、個別のページのスコアに分離することは出来ない。信頼されているサイトで配信されれば、瞬く間に上位にランク付けしてもらえる。知名度の低いサイトで配信されれば、しばらくは誰にも見てもらえない状況が続くだろう。

2004年、株式を公開する前、Googleは投資家向けの文書を発行していたが、その中でSEO – 「インデックスのスパマー達」- を事業のリスクと位置付けていた。検索結果を操作する人達に対するGoogleの本音を知りたいなら、以下の文章に目を通しておこう:

Googleは、インデックスのスパマーの影響を受けやすく、その結果、ウェブの検索結果の完全性に損害が出る可能性がある。

「インデックスのスパマー」は検索結果を操作する手段を編み出す行為を継続しており、さらに、今後もこの取り組みを止めないだろう。例えば、Googleのウェブ検索テクノロジーは、ウェブページがリンクを張るウェブサイトの重要度に応じて、ウェブページのランク付けを行っている。そのため、インデックスのスパマーにより、まとめて複数のウェブサイトにリンクを張り、検索結果を操作する試みが行われてきた。Googleはこの問題を真剣に考慮している。なぜなら、ユーザーに適切な情報を提供することが出来るか否かは、Googleの成功を左右するためだ。この類の、そして、その他の類のインデックススパムを撲滅する取り組みが失敗すると、適切な情報を提供する点においてGoogleに対する信頼は低下してしまう。その結果、ユーザーのトラフィックが減り、ビジネスに損害が出ることになる。

SEOはAdwordsのビジネスモデルと競合する。そのため、Googleはアルゴリズムの仕組みを解明し、リバースエンジニアリングを行い、Web Position Gold等の簡易ツールを作る取り組みを「真剣に考慮」している。まずはフロリダをリリースし、その後、パンダ(日本語)、続いて、ペンギン(日本語)、そして、ハミングバードが送り出された。全て、ユーザーの検索体験を改善することが目的だが、その一方で、SEOを困難にすると言う(Google側の考えでは)嬉しい副作用も兼ね備えていた。

Googleのステートメントにおいて、「適切な情報を提供する」の部分が重要な鍵を握っている気がする。

技術的な作業からPRへ

SEOには常に技術的な作業が要求される。コードをチェックし、修正する。SEOは開発とデザインの要素、そして、SEOに与える影響を認識している。その上、ウェブサーバーの仕組み、さらに、時折スパイダーがインデックスに失敗するパターンを把握しておく必要がある。

しかし、フロリダアップデートが行われてからと言うもの、マーケティングの領域がより重要になった。SEOの技術的なタスクしか実施しないサイトは、鳴かず飛ばずで終わる。パンダやペンギン等の新しいアルゴリズムはユーザーの行動を測定する。Googleがページの情報の品質を特定しようと試みているためだ。また、ハミングバードはキーワードを入力する意図を解明しようと試みる。

その結果、キーワードベースのSEOが瀕死の状態を迎えた。Googleはキーワードのリファラーのデータを隠し、各種のアルゴリズムは、ユーザーの意図と(過去および現在の)行動を基に適切な情報を提供する。ユーザーを理解し、独自で、魅力的なコンテンツを持ち、そして、マーケットの地位を確立することが、あらゆるキーワードのマークアップよりも重要になった。多くのSEO業者が基盤とするキーワードのマッチングによるSEOでは、生き残ることが出来る可能性は低い。

また、小規模なサイトから焦点が移り、現在、ブランドを優遇する傾向が見られる。 ブランドが「ブランド」と分類されるだけではなく、大規模なPRアクティビティが行われているためだ。大きな会社は複数の広告およびPRキャンペーンを実施することで、・企業名に対する検索の量が多い、・製品およびサービスとのセマンティックな関係が見られる、・信頼されているメディアから頻繁にリンクを得ている等、Googleが好むシグナルを送ることが出来る。このシグナルはランキングに反映され、また、手動のペナルティーを科された小規模 & 弱いサイトと同じ行動を取っていても、猶予を与えてもらえる状況を作り出す。

ランキング

GoogleはPageRankツールバーに見切りをつけたようだ。

Googleは、今後、少なくともPage RankツールバーにおいてはPageRankの更新を行わないつもりだ。

一部の専門家がこの点に気づいていたが、既にPageRankツールバーは存在意義を失くしていたため、ほとんど反感を買わなかった。今でもPageRankツールバーに応じて、SEOの取り組みを調整しているSEO業者はいるのだろうか?そもそも、PageRankツールバーを重要視する理由が見当たらない。外部向けのPageRankの値はおおよその人気度を示唆するものの、当該のページからのリンクが得られるランキングとは異なる。その他に非常に多くの要素が絡んでくる。Googleが今でも内部のPageRankのデータを用いているとしたら、1997年にリリースされたものと比べ、遥かに複雑なシステムを用いているはずだ。

PageRankのスコアはオーソリティを表す。あくまでもGoogleは内輪ネタとしてPageRankを今まで使っていたのだろう。

しかし、トップ10に食い込んでいるかどうかの方が、遥かにオーソリティを示す目安として有益である。Googleは 上位にランクインしているページは十分にオーソリティを持っている。事実、重要なのは、ツールバーのPageRankの値、あるいは、第三者サービスの値ではなく、あくまでもGoogleでの結果だ。トップ 10入りしたページからのリンクは、その他の何よりもオーソリティの目安として有効だ。効果的なマーケティングを行いたいなら、業界を牽引する著名なサイトからリンクを得る、そして、関係を構築する取り組みがベストだ。これはPRと言ってもPageRankではなく、Public Relationsである。

PageRankの次に追放される運命にあるのはキーワード主導のSEOだ。キーワードのリファラーデータの非公表は、終焉へのカウントダウンの始まりであった。そして、ハミングバードが留めを刺した。キーワードは、– オーディエンスが存在するかどうか、そして、オーディエンスの規模を特定することが出来るため — 今でもリサーチを行うアイテムとしては有効だ。しかし、SEOは徐々にセマンティックの関係およびサイトの分類に左右されるようになってきた。キーワードをアピールするだけでは十分ではなく、ウェブページ、および、サイトはキーワード、そして、同様のキーワードと関連し、その関連性がはっきりと認識できる必要がある。大方、検索用語だけでなく、ユーザーの意図とマッチしていなければならない。多くの例外が存在するものの、ハミングバードに関して分かっていることを考慮すると、ユーザーの意図を無視することは出来そうもない。

ランキングを確認し、重要なキーワードを切望する行為は今後も行われる。しかし、ランキングは本当に大事な取り組みから注意をそらすデメリットがあった。接触範囲、そして、具体性の方が重要度は高い。すなわち、最大の価値はどこから得られるのだろうか?具体的なキーワードほど直帰率は低く、コンバージョン率は高い。直帰率が低く、コンバージョン率が高いと、よりポジティブなシグナルが生成され、エンゲージメントを重視しつつあるランキングアルゴリズムに送り込まれる。ビジネス上のメリットをもたらさないキーワードで上位にランク付けされても意味はない。

もちろん例外はある。しかし、これが現在の傾向だ。Googleはキーワードの用語にマッチするだけではなく、ユーザーの意図にマッチするページを求めている。接触範囲に関しては、顧客が姿を表す全ての場所に接触しておきたいところだ。

広義における検索

変化に対応するため、SEO業者は出来るだけ広い範囲で検索について考えるべきである。検索は情報を探す行為だ。検索エンジンでクエリを用いて、積極的に、自主的に情報を探すこともある。その一方で、ソーシャルメディアでの購読、そして、フォローを介した受け身的な検索が行われることもある。このようなアクティビティは検索戦略にどのように盛り込まれているだろうか?

検索エンジンに限定しているわけではないため、従来のSEOの定義とは異なるかもしれない。私は定義の中で情報を広い範囲で求める点を重視している。事実、ユーザーは情報を求めて、検索を行っている。先日、エリック・シュミットは検索におけるGoogleの最大のライバルはAmazonだと指摘していた。メカニズムとチャンネルは変わるかもしれないが、情報を探す行為に変わりはない。BuzzFeedの戦略の変化が良い例だ:

2011年、ジョーナ・ペレッティがHuffington Postを去り、BuzzFeedに専念していた頃、BuzzFeedはGoogleでランキングを落とした時期があった。同サイトはソーシャルメディアマーケティングとSEOの双方を活用してトラフィックを得ようと試みていた。しかし、SEO経由のトラフィック、つまり、Googleの検索結果から得られる無料のトラフィックは干上がってしまった。

接触、時事性、そして、(大抵の場合)新鮮さは重要だ。エンゲージメントも大事だ。情報を探す行為は、キーワードのテクニカルなマッチングと言うよりも、知識におけるアイデアのマッチングに当たる。BuzzFeedは重要なポイントから決して目を離さなかった。ユーザーが情報を探す手伝いをすることこそが、BuzzFeedの使命である点を分かっていたのだ。

インターネットはまだ生まれて間もない

まだ何も起きていないと言っても過言ではない。インターネットは生まれたばかりだ。タイムマシンに乗って30年後の世界に向かい、現在を振り返れば、2044年の人々の生活を動かす優れた製品の多くが、2014年の時点では存在しなかったことに気づくはずだ。未来の世界では、ホロデッキ、仮想現実コンタクトレンズ、ダウンロード可能なアバター、そして、AIインターフェースを駆使し、そう言えば「30年前にはインターネットが存在しなかったんだね」と昔を懐かしむようになる。

30年後も全く同じように情報を探す行為は実施されているはずだ。SEOを行う目的は情報をビジターの目の前に提示することだ。従って、SEOは生き残る。以前から、SEOと言う名称は妥当ではなく、大事なポイント、つまり情報を他のサイトよりも先に検索エンジンのユーザーに提示する取り組みから目を逸らす要因となっていた。

一部のSEOの関係者は昔のSEOとはかけ離れてしまったため撤退した。SEOを有効に行うには高額なコストが必要とされるようになりつつある。しかも、とりわけ小規模な業者にとっては十分な見返りを得られない可能性がある。しかし、この考え方は、大事な点を見失っている気がする。

オーディエンスは今も確実に存在する。ニーズは変わっていない。オーディエンスは情報を見つようとしている。ユーザーが情報を探すタスクを助けることがSEOなら、その真実を見落とすべきではない。「理由」を思い出し、「方法」を合わせよう。

今後の投稿では、その「方法」を具体的に探っていくつもりだ。


この記事は、SEO Bookに掲載された「The Only Thing Certain In SEO IS Change」を翻訳した内容です。

SEO関係者には身が引き締まる内容でした。最後の「オーディエンスは今も確実に存在する。ニーズは変わっていない。オーディエンスは情報を見つようとしている。ユーザーが情報を探すタスクを助けることがSEOなら、その真実を見落とすべきではない。」、これが全てですね。

しかしGoogleの投資家向け資料の内容は、もちろんGoogleにしてみるとそういうスタンスなのでしょうが、SEO会社としては今読んでもドキッとする内容ですね。実際、ほぼスパマーの駆逐に成功しているわけですが・・・。それにしてもWeb Position Gold、懐かし過ぎました。このソフトの存在を知っている人は一体今の日本のSEO関係者にもほぼいないと思います。気づけば年を取ったものです。。。(遠い目)。 — SEO Japan