以下の一覧表をみて見てほしい。これは現在急速に成長中の、とあるスタートアップ企業における社員全員の年収の一覧表だ。Google Docsを使って常時この表をネット上で公開しているのは、TwitterやFacebookへの投稿をタイムシフトで最適化するサービスを提供するスタートアップ企業の「Buffer」。株式の持ち分や、1株当たり評価額も書いてある。つまり、含み益も含めて、どのくらいお金をもらっているか、今後もらうことになるかが全部内向きにも外向きにも透明になっている。創業者でCEOのジョエル・ガスコイン氏の報酬は年額で17万5000ドル(約2050万円)、持ち株の評価額は、すでに2218万ドル(25.5億円)というのも分かる。
Bufferでは、すべての報酬額を公開しているだけでなく、その算定式も同時に公開している。以下の表をみれば分かるように、役職、経験、居住地などに基く給与算定式もシェアしている。
例えば、エンジニア職であれば、基本給は6万ドル(約708万円)。経験レベルに応じて10〜40%が加算される。また会社が小さなときに入社した人は、それだけリスクを取ったということで、その係数も掛け算する、といった具合だ。ほかにも会社の収益向上に応じて支払われるボーナスも役職ごとに定義されているが、このテーブルも公開している。
Bufferの30人強の社員は6つの大陸、11カ国、22都市に分散していて、居住地によって生活費が異なるため、それもA〜Dのランクに応じて6000〜2万2000ドルまで追加される。面白いことに、地価高騰の著しいサンフランシスコのエンジニアだけは別格扱いで、4万ドル(約470万円、月額換算で39万円)が加算されたりもする。表を見れば分かるとおり、ABCDというアルファベット以外にもSF Engineerという文字が並んでいるのが分かる。
こうした表は、人事部や経営層でなければ見ることのないものなので、なかなか見ていて飽きないが、なぜBufferは、このような過激な透明性を目指しているのだろうか。
来日中のBuffer創業者でCEOのジョエル・ガスコイン氏に、透明経営の哲学を聞いた。
いったんは導入したマネージャー職も廃止
Bufferの経営手法がユニークなのは、給料表の公開だけではない。組織がフラットで「マネージャー」という役職が存在しないという点も、一般的な組織運営とは違っている。
「現在、社員は29人で間もなく31人になります。いちばん社員が多いのはアメリカの都市ですが、11カ国、22都市に分散しています。登録ユーザー数は200万人で、3万人が有料ユーザーです。ユーザーの分布はアメリカが半分、イギリスや日本も多いですよ」
「社員はサンフランシスコが多めですが、それでも4、5人。スペイン、カナダ、イギリス、南アフリカのケープタウンに2人ずつ、フランスに3人、チリのサンチアゴや中国の北京、台湾の台北に1人といったように非常に分散しています。でも、マネージャーは1人もいません」
「日本でも社員は探していますよ、もちろん。地域ごとに異なるサービスとのアライアンスなどは、その地域の人じゃないと分かりませんからね。ぼくはLINEがお気に入りのアプリですが、LINEなんかは日本の人じゃないとやりづらいでしょう」
「北京の人ならWeiboですね。北京で今度新たに加わった社員、彼自身はエンジニアなんですが、彼はWeiboとの提携を進めるかもしれません。最近ぼくたちの会社で新しく決めたのは、誰にも特定の肩書きを付けないってことです。だから、彼はビズデブをやるかもしれないし、マーケティングのためのブログをやるかもしれないし、地域ミートアップをやるかもしれない」
「最近のわれわれ気付きとして、肩書きは人を強く制限するということことがあります。肩書きを持つと、それを見て、肩書きから期待される動きをしようとするのが人間です。肩書きがアイデンティティになってしまうのです」
「でも、人にはそれぞれ提供できる様々な価値、発揮できる力があります。だからBufferは誰でもどんなアイデアでも言えるようにしています」
1人の人間が複数の役職を兼ねるのは小さな組織では当然だし、スタートアップ企業では良くある話。まだBufferが小さいからそうなっているだけではないのだろうか?
「ええ、数人とか10人ぐらいまでだと、どこの組織やスタートアップでも、そうやって複数の役割を果たすというのが自然でしょう。でも、組織が20人を超えてくると違います。実はわれわれも徐々に組織構造を増やしていったのです。いったんは、そういうふつうの企業やり方を試したし、マネージャー職も設けたのです。でも、ここ3、4カ月で再び元のフラットな組織に戻したんです。イギリスからシリコンバレーにやってきて、Bufferを2010年に創業するまでの間に、OnePageというスタートアップ企業に在籍していました。そのときも含めて過去数年に経験してきた伝統的な組織運営やり方に違和感を覚えていたんですね」
Bufferは、いま社員数が30人を超えたところであるものの、100人、200人、500人と社員が増えていっても、今のままフラットな組織運営を続けるだろうし、それは可能だと考えているとジョエルは言う。
「GitHubやZapposなどの例も似てるかもしれません。彼らの組織はフラットで、やっぱりマネージャーがいません」
たまたまインターネット企業の中に変わった会社が出てきていて、フラットな組織運営をやってうまく行ってるだけのように思えるが、ジョエルは今、まったく新しい組織運営の形態が広まりつつあり、Bufferでもそれを実践しつつ世に広めたいのだという。彼が言及するのはフレデリック・ラルーというベルギー出身の経営コンサルタントで、Bufferが実践している組織運営の新しいあり方は、「Reinventing Organizations」という本にまとめられている。
有史以来5000年、人類が経験した4つの組織運用形態
フレデリック・ラルーは、マッキンゼーでアソシエートパートナーを務めたのち、組織運営に関するアドバイザーをコーチとして活動している。この活動の中で、全く違う国や産業で、互いに存在を知らない会社や組織が、ある種の共通する組織運営の方法論に辿り着いていることに着目。その共通項をまとめた研究を書籍として出版し、講演などで話しているのだという。
少しBufferのジョエルの話からそれるが、ここでラルーの講演を概観しよう(ここに講演動画が公開されている)。
ラルーの描く「新しい組織運営」は10年とか20年というスパンのトレンドの話ではなく、もう少し時間スケールの幅が大きい。彼は人類5000年の歴史には4つの組織運営の形態があったという。それぞれの形態が登場してブレークスルーを達成した段階で、人類は前段階では考えられなかったような生産性や大事業を可能にしてきたのだという。そして、いま現在5つ目の形態が出てきているという。
人類初期の組織は、現在マフィアやストリートギャングに見られる小グループの運営を行っていた。ボスがいて、恐怖による支配をするもので、常に恐怖を喚起する必要がある上に、いつでもトップがナンバーツーに後ろから刺されて体制が変わるという不安定さがあるため、規模の大きな組織にはならない。狼の群れのようなものだとラルーは言う。
人類2番めの段階は5000年前の農業革命で登場した。秩序と規則がある世界で、神がそれを与える。社会に構造がある。キリスト教会や軍隊、学校、政府組織といったものが、この段階で登場した組織で、このとき2つのブレークスルーがあった。伝達系統(レポーティング・ライン)というものが生まれた。キリスト教会でいえば、どうやって司教がローマ法王を殺そうかなんて、少なくとも普段は考えないし、ローマ法王はいちいち世界中の司教に会わない。もう1つのブレークスルーは、繰り返し可能なプロセスの発明だ。こうしたブレークスルーにより、ピラミッドや大規模灌漑システム、大聖堂などが構築可能になった。これらはマフィア型組織では想像すらできない偉業といえる。
その次に起こったのは、科学革命にともなう組織運営のイノベーションだ。観察と改善による生産性の拡大で、現在の多国籍企業やウォール・ストリートがこの段階で生まれる。この段階での最大のブレークスルーは、「イノベーションの発明」だとラルーは言う。キリスト教会や公立学校にR&D部門はないし、組織横断プロジェクトなどもない。説明責任や実力主義といったものも、この段階で取り入れられたものだ。司教にはKPIはない。また司教はローマ法王になれないが、多くの会社組織では、実力さえあればメールボーイから社長に登りつめることも現実に起こり得る。
情報や知識の重要性が高まってくるにつれて、次の4つ目の段階の組織運営形態が現れる。この段階の企業としてラルーが挙げるのは、スターバックスやサウスウェスト航空、Zappos、ベン&ジェリーズなどだ。それまでの組織は巨大な機械になぞらえられることが多かった。組織を「デザイン」するといい、組織の歯車という言い方もする。しかし、より新しい段階では、こうした製造業のメタファーよりも、人間のアイデアや思考といったソフトな面にフォーカスが当たる。たとえば価値観駆動の文化という特徴がある。上に挙げた企業群では、その企業が示す価値観について社員は冷めた態度を示さない。また、この段階にある組織は、大胆な権限移譲や、ステークホルダー型による運営という、前段階の組織運営と異なるモデルを採用している。この段階にある組織が口をそろえて言うメタファーは「家族」だ。
狼の群れ、キリスト教会、多国籍企業、家族――。人類は4つの組織運営の形態を経験してきた。そして今新たに登場しようとしているのが、自律分散型の組織運営だというのがラルーの指摘だ。簡単にいえば、それは生物の個々の細胞のように自律分散して動くが、全体のシステムとして複雑な環境に適応できる全体性と柔軟性を持つということのようだ。これは現在の政府や大企業、学校といったヒエラルキーのある組織運営とはドラスティックに異なるという。
ラルーは、この段階の特徴を3つのキーワードで語る。
- セルフマネジメント
- ホールネス(Wholeness;全体性)
- 進化的目的意識
事例として挙げるのは「Heiligenfeld」、「FAVI」、「Sounds True」、「RHD」、「AES」、「ESBZ」、「Buurtzorg」、「Patagonia」、「Morning Star」、「BSO/Origin」、「Sun Hydraulics」、「Holacracy」といった企業名を挙げる。聞きなれない名前が多いが、介護ケア、精神病院、自動車部品メーカー、メディア、電力発電、学校、小売、EC、IT、食品など様々な産業分野にまたがっている。
これらは非常に変わった組織なので、ほとんど誰も注意を払っておらず、ときどきメディアで取り上げられるとしても特殊例として露出するだけなのだという。ただ、どの組織も、前段階の組織に比べて劇的に高いパフォーマンスを発揮しているというのだ。
例えば、オランダのBuurtzorgという介護ビジネス。もともと1人の看護師が病院を去って2006年に始めた近隣介護サービスの小さなグループだったが、2014年には8000人規模の組織となり、市場シェアでも70〜80%と同国のトップに立っているという。8000人の社員がいるが、マネージャーはいないし、階層型の組織構造もない。10〜12人が地域に根づいた介護サービスを提供し、その上、それぞれのグループが自律的に採用や計画作りをやる小さな会社のように動くのだという。それまでの大組織によるサービスでは、訪問先の老人の個別事情にも疎いまま医療行為を行わざるをえず、ロボットのようにマニュアル通りの対応しかできなかった。それがBuurtzorgでは地域に根ざして人材が固定化した結果、顧客の老人とコーヒーを飲んで悩みを聞く時間すらでき、看護師、顧客ともにハッピーになっているのだという。
Burrtzorgの拡大フェーズでは、どうやったら小さなグループで上手くサービスを運営できるかを、すでにサービスを行っているグループが教えたのだという。
計画経済が残る一部例外的国家をのぞいて世界経済にはボスがいない。交通システムには中央ですべての車両に指示を出す司令塔もない。人間の細胞の中にはボスはいないし、脳にCEO細胞はない。誰も事前計画など作らないのに、きわめて複雑なシステムとしてうまく回っている。こうしたシステムにあるのは調停などの仕組みと、一群のルールだ。ラルーが多数の新型組織から抽出したのは、これらのルールだ。いきなり従来の階層型組織を分解しても、それはカオスを生むだけ。新型組織の多くは似たルールにたどり着いていた、という。
例えば、階層構造なしに、どうやって意思決定をするのか。従来の発想だと階層によるトップダウンか、ボトムアップによる合意かという二択に思える。しかし、新しい組織はどこも「アドバイス・プロセス」にたどり着いていた、という。階層型の承認プロセスに慣れていると驚くが、こうした組織では、誰でも、どんな意思決定でもできるのだという。たとえ、会社のお金を使うような意思決定であってもだ。ただし、事前に「当該分野の専門性を持つ人の意見を聞くこと」と「その意志決定の影響を受ける人の意見を聞くこと」が条件となっている。これによって組織にとって必要なことなら誰でも何でもやっていいというルールが採用されている。
給料決定のプロセスでも、かつてはボスが昇給やボーナスを決めていたが、新しい組織では違う。例えば1970年創業のトマト関連食品で大きなシェアを持つ北米企業のMorning Star。この会社には、どの工場にも工場長はいないという。従業員は、自分自身で「今年は自分にx%の昇給を認める」という推薦文を書く。次に工場の従業員の中からコミッティーを選び、この人たちが全員分の推薦文を並べて「多すぎだ」「もう少し上げた方がいい」とアドバイスを出す。驚くべきことに、多くの推薦文は妥当で、わずか1%の人だけが修正アドバイスを受けるという。人々は自分の給料について、きわめて正確に見積もることができるというのだ。給料も含めて、こうしたプロセスはすべて透明に行われているという。
会議運営でもユニークなやり方が見られるという。多くの組織での発言はキャリア上のエゴから発したものが議論となって非生産的になることがある。それを防ぐために、鐘を鳴らす担当者だけを決めておき、誰かがエゴから出た発言をしたときに、チーンと鐘を鳴らして数秒間の沈黙を強要することで、エゴなしの、組織全体の目的や、価値の実現のための議論ができるようになるという。意見を取りまとめる上司はおらず、政治的駆け引きも起こらない。
ストック・オプションは選択制で、持株比率も全て公開
さて、Bufferのジョエルの話に戻ろう。
Bufferが給料表の公開以外にも、ストック・オプションか給料かを選択制にしているのも、多くのスタートアップ企業と異なるところという。個々の社員の選択やその結果についても全て透明になっている。
急成長を目指すスタートアップ企業ではストック・オプションを用意することが多い。会社が成長して買収やIPOといったエグジットに成功したとき、創業者はもちろん初期社員や一般社員であっても莫大なキャピタルゲインが得られる。シリコンバレーで大きなIPOがあると、受付嬢ですら数億円というような話がある。ニンジンをぶら下げられて走る馬のようなやり方ばかりじゃない、とBufferのジョエルは考えているそうだ。
「Bufferに入社する社員は全員、45日間はブートキャンプ期間です。その45日の最後にカルチャーフィットを見るようにしています。Bufferは文化も経営もクレイジーな面がありますからね(笑)、ちゃんとお互いに相性が合っているかを見ます」
「このとき、毎年1万ドルを給与として受け取るか、エクイティ(株式)を受け取るかを選べます。サンフランシスコではいま、最後にやってくるかどうか分からない「究極の給料支払日」に向けて健康を害しながら、とても安い給料でがむしゃらに2、3年ほど働くということが多い。そういうシリコンバレーのモデルには共感できません」
一方で、エクイティを受け取った場合であっても、それが一定期間ごとに現金化できるようにしていくという。
「最近また3500万ドル(約4億1000万円)の資金を再度調達をして流動性が出たので、ぼくと共同創業者のリオ、ほかの何人かのメンバーは経済的に報われました。ストック・オプションにもちゃんと意味があるんだよ、と示せたと思います。会社のバリエーションもちゃんとやることで、Bufferが順調に成長していることも示せるのです。Bufferでは、バリュエーションも株式のシェアも全部公開しています」
「すでに買収も話が来ていますが、すべて断っています。むしろ、自分たちが生きたいように生きられる選択をしようということなんです。だからBufferは収益があるので本当は資金調達の必要性はないのだけど、3年おきに資金調達をして流動性を持たせ、ちゃんとストック・オプションを現金化して社員が報われるようにしたい。住宅ローンを支払ったり、子どもを大学へやる学資金にしたりね」
毎月の給料を含む報酬体系と、その実績などを公開した結果、Bufferには世界中から優秀な人材が集まっているという。
サービス利用者に対しては、売上の使い道の内訳も公開
社内の仕組みや情報が透明であるだけなく、Bufferではサービス面でも透明性を上げている。
「サービス面でも透明にしています。例えばサービスの料金ですね。SaaSにお金を払っている場合、そのお金が何に使われいてるのか、一般ユーザーはふつう知ることができません。ぼくらは全部ブレークダウンして、サーバーにいくら、人件費にいくらというのを公表しています。この内訳情報は6カ月ごとに更新していますが、できればリアルタイム更新にしたいですね」
「収益については、リアルタイムでダッシュボードを公開しています。この図を見ると収益が少なく見えるかもしれません。でも、収益率って定義がいろいろあります。多くのスタートアップでは給与をのぞいた計算をしているので90%とかの収益率になりますが、ぼくらは給料も全部計算に入れた上に、新規開発にも投資しているので、実際には収益率は高いのです」
こうした透明なやり方は、ほかの会社でも適用できるだろうか?
「どこまで透明にできるのかっていうのは興味深い問題です。社内だけの問題でなくなるからです。われわれが取引をするサプライヤーやパートナーの中には、ぼくらが何にいくら払っているのかを公開してほしくないという企業も少なくないんです。ぼくらはコストについても透明にやりたいけど、できていません」
「隠そうとするのは自然なことです。なぜかというと、価格は固定ではなく、顧客によって変えているからなんですね。個別のクライアント企業に、違った料率の割引を適用した見積もりを出したりしますよね。Webサイト上には何の料金情報も出ていなくて。1000ドルや2000ドルといった月額であっても、そういう企業は多いです」
「いつか、完全に透明になれるときがくるのかもしれませんし、そのときには誰にとっても良い話になると思うのですが、今のところ透明性に欠けるのがふつうです。なぜこうなっているかというと、不透明でいるほうが短期的には売上が伸びるからなんですね。でも、長い目でみれば、透明性によって信頼を勝ち得ることができるはずです」
「別の例を出しましょう。もしBufferが誰かにとって最適なプロダクトじゃないとなれば、たとえ競合サービスであっても、われわれは他のプロダクトを勧めますね。このやり取りで信頼を得られれば、そのユーザーは、もしほかの誰かにとってBufferが適していると思えば推薦してくれるかもしれませんよね?」
「実際にサービスを使わなくなったものの解約を忘れている幽霊会員がいます。収益の大部分を、こうしたユーザーから上げているような会社というのも多くあります。もし有料会員が2、3カ月まったく使ってなかったら、どうするべきか。最近、このことを社内で議論しました。今のところ手作業ですが、ぼくらは通知をしています。この通知は自動化するべきだというふうに思っています」
「最近、非営利組織についてはサービスを5割引きにするとアナウンスしたんですね。すると、ある社員が、すでに利用中の非営利組織についても、さかのぼって払い戻すべきではないかと言いました。それで、ぼくらは実際に数カ月分を払い戻しました。17カ月分の払い戻しをしたという例もあります」
「使っていないサービスが課金されている状態をユーザーに通知をしないなんて、維持可能なビジネスじゃないと思いますね。ぼくもイギリスの通信キャリアで支払いを求められたことがあります。契約上は請求も当然だし、ユーザーが悪いといえばそうなんですが、契約だからといって例外なしに利用実績のないサービスに対して課金をするのなんてクールじゃないっていう時代になると思います。SNSがこれだけ広く普及している時代、誰でも声を上げることできます。何かのサービスでイヤな体験をしたら情報発信ができるので、SNSは透明性を加速する方向に働くと思います」
Bufferでは昨年、システムに不正侵入を受けたが、これについても2日以内に全情報を公開したという。隠し事をしない、透明性を高めるというのを徹底している。ジョエルは「誰に何を言ったのか、言ってないのかを覚えておくのは大変ですからね」と笑う。
「給料一覧と算定式を公開したことで、たくさんのメールをスタートアップ企業から受け取っています。お前のところの算定式使ってるよ、ということを言って感謝の言葉を受け取ることも良くあります。Bufferが500人ぐらいの会社になっても、今と同じようにフラットで透明性の高い経営をしていきたいですね。ぼくはBufferは、ほかの企業や、世界全体に良い影響を与えることができると思っています」